大東諸島方言

大東諸島方言(だいとうしょとうほうげん)は沖縄県大東諸島南大東島南大東村)と北大東島北大東村)で話される日本語の方言である。歴史的経緯から琉球諸語ではなく八丈方言(八丈語)の系統を汲むが、現在では琉球諸語やウチナーヤマトグチの要素も見られる。

歴史

大東諸島は元々無人の島々で琉球王国の影響が及ばず、1900年明治33年)以降、玉置半右衛門を中心とする八丈島からの開拓団によって開発が始められた。島の製糖産業およびインフラの整備が進むとともに八丈島だけでなく沖縄本島などからも労働者が集まるようになり、大正期には沖縄系島民の数が八丈系島民を上回ったが、経済的優位による八丈系上位の階層構造、島外との往来の制限、教育現場での標準語励行などから、八丈系島民に沖縄の文化・言語はほとんど浸透しなかった[1]。八丈系と沖縄系の間の階層構造は1946年昭和21年)以降のアメリカ軍政によって瓦解したが、その後もしばらく八丈系と沖縄系の間での婚姻は避けられ、八丈系と沖縄系の男女が婚姻する際には沖縄系側(多くは女性)が八丈系の文化・言語の習得に努めるような状況が続いた[2]。また、1982年(昭和57年)に八丈島と南大東島の間で姉妹島縁組盟約が締結されるなど、八丈島との親善交流が続けられている[3]。以上の経緯から、八丈系と沖縄系の島民融和が進んだ今も八丈島の文化の影響が残り、沖縄であって沖縄でない独自性が生じた[3]

表現

体系的に八丈方言が継承されているわけではないが、八丈方言に由来する単語が確認できる[4]

  • えずい - 着心地が悪い。八丈方言由来。[5]
  • おじゃりやれ - いらっしゃい。八丈方言由来。[3]
  • 砂糖てんぷら - サーターアンダーギー。ウチナーヤマトグチ由来。[3]
  • たらがる - 地べたにべたっと座る。八丈方言の「(楽に)座る」という意味の言葉が変化したもの。[5]
  • どんごめ - ばか。八丈方言由来。[4]
  • のもる - 泥に沈む。沼地で足がずぶっと入る。[5]
    • 例:そこは柔らかいからのもるよ[5]
  • ぶっちゃる - ゴミを捨てる。八丈方言由来。[5]
  • ほげちらかす - 散らかす。八丈方言の「ほげる」「ほげちらす」が変化したもの。[5]
  • まぐれる - 猛烈に痛む。八丈方言の「卒倒する、気絶する」という意味の言葉が変化したもの。[5]
    • 例:やめてやめて(=痛くて痛くて)まぐれる[5]
  • 可能表現に能力可能「きれる」と状況可能「(ら)れる」を使い分ける。ウチナーヤマトグチ由来。[5]
    • 例:その子はまだ幼稚園児だから泳ぎきれん(その子はまだ幼稚園児だから泳げない)[5]
    • 例:その服はえずくて着られんよ(その服は着心地が悪くて着られないよ)[5]

日本語の内での位置づけ

脚注

  1. ^ 進(2017), 218-226頁
  2. ^ 進(2017), 226-228頁
  3. ^ a b c d 進(2017), 232-233頁
  4. ^ a b 金田章宏「金田研究室」のうち、「方言資料」→「八丈方言」→「八丈方言って」と進んだページ。2021年12月30日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k ロング(2004)

参考文献

  • 進尚子「<研究ノート>複数のオキナワ・アイデンティティ : 沖縄県南大東島の事例」『沖縄文化研究』44、法政大学沖縄文化研究所、2017年
  • ダニエル・ロング「島の言語の二つの顔 -孤立と接触のはざまで」『月刊言語』2004年1月号、大修館書店

関連項目

  • 小笠原方言 - 本方言と同じく、八丈方言にルーツを持つ方言
*は言語島の方言
本土方言(狭義の日本語)
東日本方言
北海道方言
  • 内陸部方言
  • 沿岸部方言
東北方言
北奥羽方言
南奥羽方言
関東方言
東関東方言
西関東方言
北部伊豆諸島方言
  • 大島方言
  • 利島方言
  • 新島方言
  • 式根島方言
  • 神津島方言
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  • 御蔵島方言
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