直心影流薙刀術

曖昧さ回避 この項目では、薙刀術ならびに短刀術を表芸とする系統の直心影流について説明しています。剣術を表芸とする系統の直心影流については「直心影流剣術」をご覧ください。
直心影流
じきしんかげりゅう

画像をアップロード
別名 直心、神影流薙刀
使用武器 薙刀短刀
発生国 日本の旗 日本
発生年 室町時代末期
創始者 松本備前守紀政元
中興の祖 園部秀雄
源流 鞍馬流柳剛流
派生種目 なぎなた
主要技術 薙刀術、短刀術
公式サイト http://www.jikishin-naginata.jp/
伝承地 兵庫県静岡県ほか海外を含む各地
テンプレートを表示

直心影流薙刀術(じきしんかげりゅうなぎなたじゅつ)は、薙刀術を表芸とする古武道流派。同流派の全国組織は秀徳会(しゅうとくかい)で、会員数は約600名。日本の古武道を統括する団体である日本古武道協会並びに日本古武道振興会に加盟している。略称は直心(じきしん)。別名「神影流薙刀」。

中世末期に創始された鹿島神伝 神影流(かしましんでん しんかげりゅう、関東の鹿島の太刀と、関西の鞍馬流の長所を合わせた新剣法)を基に、臑斬りが特徴的な柳剛流の要素を加味して整理されたものが現在の姿である。

系譜

松本備前守政元に始まる鹿島神傳直心影流と同一の系譜であり、細部の点で異同があるものの、基本的には同じ直心影流兵法の流れを辿っている。ただし、現在の直心影流薙刀術と鹿島神傳直心影流とでは、外形的には技術的差異がある。現在は、薙刀術ならびに短刀術を表芸とする秀徳会と、剣術を表芸とする鹿島神傳直心影流とで別団体となっている。松本備前守を初代とするものは他にも鹿島神流などがあり、やはり途中までは同様の系譜を辿る。

比較

団体の違いによる直心影流の系譜を比較したものである。

秀徳会 鹿島神傳直心影流
初代 創始 松本備前守紀政元(元祖) 松本備前守紀政元(流祖)※杦本とも
二代 新陰流と改称 上泉伊勢守藤原秀綱 上泉伊勢守秀綱
三代 神影流と改称 奥山孫次郎平公重 奥山休賀斎平公重
四代 真新陰流と改称 小笠原金左衛門源長治 小笠原源信斎源長治
五代 新陰直心流と改称 神谷文左衛門尉直光 神谷傳心斎平眞光
六代 直心正統流と改称 高橋弾正左衛門源重治 高橋直翁斎源重治
七代 直心影流と改称 山田平左衛門藤原光徳(流祖) 山田一風斎藤原光徳
八代 直心影流 長沼四郎左衛門藤原国卿 長沼四郎左衛門国郷
九代 直心影流 長沼正兵衛藤原綱卿 長沼活然斎藤原綱郷
十代 直心影流 藤川弥司郎右衛門尉藤原近義 藤川弥司郎右衛門近義
十一代 直心影流 赤石郡司兵衛尉藤原孚祐 赤石郡司兵衛孚祐
十二代 直心影流 団野源之進藤原義高 団野眞帆斎源義高
十三代 直心影流 男谷下総守精一郎信友 男谷精一郎信友静斎
十四代 直心影流 佐竹鑑柳斎源義文・佐竹茂雄(女)夫妻 榊原鍵吉源友善
十五代 直心影流 園部秀雄(女) 山田次朗吉一徳斎
十六代 直心影流 園部繁八・園部朝野 夫妻 (十五代を最後に、以後宗家制度廃止)
十七代 直心影流 戸谷明子
十八代 直心影流 園部正美
十九代 直心影流 荻原晴子


併伝武術

直心影流第十五代宗家園部秀雄の夫である園部正利の流儀が直猶心流であったことから、以降代々、直猶心流のうち鎖鎌術のみが併伝されることとなった。直猶心流鎖鎌術の修得は、直心影流短刀術の技法を十分に会得した者でなければならないため、直心影流虎の巻以上の允許を得た一部の上層指導者のみが修得している。

なお、直猶心流剣術については、秀徳会とは別の団体が「直猶心流剣道形」などとしてその貴重な技法を保存・継承している。

特長

薙刀術では、攻守を兼ね備えた隙のない奥義 小脇の構え(こわきのかまえ)と、水車(みずぐるま)や風車(かざぐるま)という車返しの技法が特長的である。自然現象に見られる流れるような動きや力の使い方は、華麗にして豪快であり、見る者を魅了する力がある。

直心影流は、天道流とともに、現代武道である全日本なぎなた連盟の「新しいなぎなた」の成立にも深く関わっている。なぎなたの技の中でも、とりわけ華麗にして雄大な「振り返し」の操法は、まさに直心影流の風車(かざぐるま)そのものである。

技は薙刀に固執することなく、ときには拳で当身を入れたり、逆に刀を奪取して斬り付けたり、薙刀を払い落とされた場合にとっさに短刀術に切り替えるなど臨機応変に繰り出される。

用具・着装・所作

直心影流は所謂「女薙刀」で、巴形薙刀の形状の小ぶりな刃を付けた小薙刀(神影流薙刀)を使用する。全日本なぎなた用の用具や、同じ二大流派の天道流のそれよりも柄が短い。天真正伝香取神道流などの大きな薙刀に比べると遥かに軽量である。鍔がない。中段に構えたとき、手元は石突側を余さず端を握り、肘は伸ばさずに軽く曲げる。

剣術の刀(とう)は直刀で反りがほとんどなく、鍔を付けない。当流剣術の「上段の構え」は、剣道でいう「諸手左上段の構え」に相当する構え方である。

短刀術は、合気道などで用いる普及型の短刀よりも形状が長い。仕太刀すなわち薙刀を持つ側は常に短刀を帯刀しておくことが基本である。

は結び切りで着用する。十文字に着付ける天道流とは袴の着付け方で見分けがつく。また天道流のように上衣の袖を絞らず、打太刀籠手を装着することもない。折敷をする際、天道流では左膝を着き、直心では右膝を着く。

全国的普及

直心影流は全国の学校現場で多くの国民に学ばれた

明治時代に全国の並み居る剣豪の猛者たちを相手に、試合で連戦連勝して悉く総なめにした直心影流第十五代宗家園部秀雄の勇名は全国にとどろかせ、近代薙刀術史上最高の名人として評価が高い同人の直心影流は、学校教育の現場にも取り入れられ、全国的普及をみた。直心影流は数多くの薙刀教員を教壇に送り出し、国民の薙刀教育に大きく貢献した。直心影流第十六代宗家園部繁八は、学校教育用での薙刀術をまとめ上げた『国民学校 薙刀精義』を著している。

関連項目

参考文献

  • 『日本の古武道』横瀬知行著 薙刀術 天道流薙刀術 直心影流薙刀術
  • 『財団法人全日本なぎなた連盟三十年史』全日本なぎなた連盟編
  • 『国民学校 薙刀精義』園部繁八著

外部リンク

  • 日本古武道協会 直心影流薙刀術
  • 直心影流薙刀術「秀徳会」 - 秀雄の娘婿である園部繁八が創設


薙刀術の他の流派は下記テンプレートを参照せよ

日本の旗 武芸十八般 と 日本各地の流派流儀
弓術きゅうじゅつ半弓術はんきゅうじゅつ(1)
  • 小笠原流
  • 武田流
  • 日置流
  • 大和流
  • 本多流
  • 正法流
  • 無影心月流
  • 竹林流
  • 尾州流
  • 尾州竹林流
  • 尾崎流
  • 紀州竹林派
  • 石堂竹林派
  • 石堂竹林派藤家一流
  • 竹林応心派
  • 応心流
  • 印世流
  • 印西流
  • 吉田印西流
  • 日置流印西派
  • 日置流吉田印西派
  • 日置吉田流
  • 日置流大蔵派
  • 日置流道雪派
  • 日置流雪花派
  • 日置流寿徳派
  • 寿徳流
  • 日置古流
  • 雪荷流
  • 日置豊秀流
  • 日置流竹林派
  • 日置流左近派
  • 薩摩日置流
  • 吉田大蔵流
  • 吉田流
  • 吉田当流
  • 大蔵流
  • 大進流
  • 八幡蟇目流
  • 当流
  • 惣流
  • 伴流
  • 日本流
  • 集斎流
  • 矢沢流
  • 片貝流
  • 片岡流
  • 石黒流
  • 北条流
  • 太子流
  • 朝倉流
  • 一貫流
  • 小篠流
  • 広重流
  • 上田流
馬術ばじゅつ(2)
  • 小笠原流
  • 大坪流
  • 大坪本流
  • 大坪新流
  • 大坪古流
  • 大坪当流
  • 大坪八条流
  • 八条流
  • 八条当流
  • 新八条流
  • 高麗八条流
  • 高麗流
  • 八丈流
  • 九条流
  • 内藤流
  • 武田流
  • 荒木流
  • 通明流
  • 上田流
  • 解龍流
  • 大泉流
  • 大熊流
  • 二宮流
  • 山形流
  • 人見流
  • 一全流
  • 調息流
  • 松山調息流
  • 当流
  • 神当流
  • 悪馬新当流
  • 常心流
  • 鎌倉流
  • 賀茂悪馬流
  • 自勝流
  • 勝鞍流
  • 素鞍流
  • 須鞍流
  • 徒鞍流
  • 御当流
  • 一和流
  • 信直流
  • 常心流
  • 森内流
  • 神妙流
  • 斎藤流
  • 近授流
  • 柳田流
  • 依助流
  • 鎌倉流
槍術そうじゅつ(3)
剣術けんじゅつ(4)
水泳術すいえいじゅつ(5)
居合術いあいじゅつ抜刀術ばっとうじゅつ(6)
小具足術こぐそくじゅつ短刀術たんとうじゅつ
脇差わきざし小太刀術こだちじゅつ(7)
十手術じってじゅつ鉄扇術てっせんじゅつ(8)
銑鋧術しゅりけんじゅつ(9)
含針術ふくみばりじゅつ吹矢術ふきやじゅつ(10)
薙刀術なぎなたじゅつ長巻術ながまきじゅつ(11)
砲術ほうじゅつ棒火矢術ぼうひやじゅつ(12)
  • 稲富流
  • 外記流
  • 荻野流
  • 荻野嫡流
  • 種子島流
  • 田付流
  • 津田流
  • 関流
  • 森重流
  • 陽流
  • 高島流
  • 西洋新流
  • 西洋真伝流
  • 相建西洋流
  • 田布施流
  • 東軍流
  • 不易流
  • 不動流
  • 藤岡流
  • 豊田流
  • 澤田流
  • 威風流
  • 威遠流
  • 神奇威遠流
  • 備中松山藩御家流
  • 天山流
  • 反求流
  • 長短反求流
  • 短最流
  • 井上流
  • 外記流
  • 井上外記流
  • 岸ノ和田流
  • 岸和田流
  • 安盛流
  • 安見流
  • 佐々木流
  • 木崎流
  • 奥谷流
  • 一火流
  • 一幹流
  • 一味流
  • 一貫流
  • 一気流
  • 心的妙化流
  • 松本流
  • 落松流
  • 若松流
  • 赤松流
  • 赤沢流
  • 浅沢流
  • 中嶋流
  • 中筒流
  • 中遠流
  • 未明流
  • 統一流
  • 三国伝東条流
  • 南鵬流
  • 南蛮流
  • 堅毘流
  • 南蛮堅批流
  • 南蛮櫟木流
  • 櫟木流
  • 生流斎智之法
  • 大石流
  • 大戦流
  • 大成流
  • 大成自得流
  • 犬間流
  • 赤星流
  • 星山流
  • 渕山流
  • 甲山流
  • 笹山流
  • 天山流
  • 天野流
  • 休流
  • 吉川流
  • 石川流
  • 中川流
  • 江川流
  • 小川流
  • 上川流
  • 駒根木流
  • 武衛流
  • 造明流
  • 自明流
  • 自知流
  • 自得流
  • 自覚流
  • 自練流
  • 自縁流
  • 自由斎流
  • 永田流
  • 牧田流
  • 真田流
  • 大田流
  • 太田流
  • 柴田流
  • 金田流
  • 沢田流
  • 稲田流
  • 吉田流
  • 古田流
  • 富田流
  • 石田流
  • 氏田流
  • 島田流
  • 郷田流
  • 知徹流
  • 知振流
  • 日新流
  • 新格流
  • 新旧流
  • 諸葛流
  • 夢想流
  • 北条流
  • 山本勘介流
  • 山下流
  • 竹谷流
  • 神発流
  • 唯心流
  • 霞流
  • 榊原流
  • 榊山流
  • 奥村流
  • 米村流
  • 米村止停流
  • 三木流
  • 矢木流
  • 植木流
  • 柘植流
  • 笹岡流
  • 富岡流
  • 鉄斎流
  • 島流
  • 大島流
  • 豊島流
  • 亀島流
  • 御家流
  • 兵頭流
  • 不息流
  • 武宮流
  • 武見流
  • 奮武流
  • 下館流
  • 新編舎人流
  • 新心流
  • 高畑流
  • 甲賀流
  • 培原流
  • 南部流
  • 窺源流
  • 海部流
  • 久我流
  • 渡部流
  • 靖海流
  • 加納流
  • 酒井流
  • 極奇流
  • 空心流
  • 心極流
  • 長谷川流
  • 太玄流
  • 中和流
  • 勝野流
  • 磯野流
  • 宇治田流
  • 片桐流
  • 菅沼流
  • 菅谷流
  • 山谷流
  • 小谷流
  • 小野流
  • 長門流
  • 三留流
  • 古新流
  • 神発流
  • 井原留流
  • 提要流
  • 嶋本流
  • 浅木流
  • 浅香流
  • 有坂流
  • 隆安流
  • 筒習流
  • 円極流
  • 那須流
  • 戸土瀬流
  • 元福流
  • 鳥居流
  • 目良流
  • 高野流
  • 梵天流
  • 河野流
  • 求玄流
  • 藤井流
  • 宗徳流
  • 平尾流
  • 無二流
  • 神伝流
  • 村井流
  • 三破神伝流
  • 高安函山流
  • 宇多長門流
  • 馬場道興流
  • 宇佐流
  • 有馬流
  • 天弘流
  • 金内流
  • 川合流
  • 坂元流
  • 沢流
  • 林流
  • 磯流
  • 三全流
  • 小谷流
  • 一元流
  • 先天誠神流
捕手術とりてじゅつ捕縄術ほじょうじゅつ(13)
柔術じゅうじゅつ拳法やわら
体術たいじゅつ組討くみうち
合気あいき(14)
棒術ぼうじゅつ杖術じょうじゅつ(15)
鎖鎌術くさりがまじゅつ契木術ちぎりぎじゅつ
分銅鎖術ふんどうぐさりじゅつ(16)
錑術もじりじゅつ(17)
隠形術しのび(18)