PDSAゴールドメダル

PDSAゴールドメダル
PDSA Gold Medal
イギリスの旗 イギリス
主催病気の動物のための人民診療所(英語版)
初回2002年
公式サイトPDSA Gold Medal

PDSAゴールドメダルPDSA Gold Medal)は、動物の勇敢さと任務への献身を称える賞であり、今日では動物におけるジョージ・クロスに該当する栄誉ある賞として認識されている[1][2][3]

概要

PDSAゴールドメダルは2001年、イギリスの動物福祉関連慈善団体「病気の動物のための人民診療所(英語版)(PDSA)」により制定された。1943年、同じくPDSAにより制定されたディッキンメダル軍用犬を称える賞であったのに対し、ゴールドメダルは民間の動物を広く対象とするために制定された。授与対象は、自らの命を危険に晒したり、人間や動物の命を救う活動に従事した、あるいはそれらに準じる献身的な活動が認められた動物である。これには警察犬災害救助犬などが、公務で死亡したまたは重傷を負ってしまった場合も含まれる[4]

2002年11月の第1回授賞式では、障碍を持つ飼い主の命を救った補助犬エンダル(英語版)と、2頭の警察犬、ブラとモンティにメダルが授与された[5]

2020年9月現在、PDSAゴールドメダルを授与された動物は30頭で、2020年に受賞した地雷探知ネズミのマガワを除き全て犬である。国別ではイギリスが圧倒的に多く、それ以外はノルウェーバムセ(英語版)[6]、ニュージーランドのジョージ(英語版)とゲイジ[7][8]スペインのエイジャックス[9]、そしてタンザニアのマガワである[10]

受賞者

2002年に受賞したエンダル(英語版)
  *死後に受賞
受賞
年月
受賞者 功績 事件の
日付
出典
200211 2002年11月* ブラ レスターシャー警察犬。1990年、ナイフを振り回す犯人逮捕に貢献したが、自らは首から心臓を刺されて死亡。 199005 1990年5月 [11]
200211 2002年11月 デルタ・モンティ メトロポリタン警察の警察犬。単にモンティとも。銀行強盗事件に出動し、犯人のナイフで大けがを負ったが手術の末回復した。 200102 2001年2月 [11][12]
200211 2002年11月 エンダル(英語版) ラブラドール・レトリバー身体障害者補助犬。意識を失い危険なオーナーの体勢を立て直し毛布を掛けた。更に携帯電話を取って来るとオーナーの顔に押し当て、意識が戻るまでひたすら待ち続けた。 200105 2001年5月 [5]
200604 2006年4月 オルカ(英語版) ゴールデン・レトリバーの身体障害者補助犬。 オーナーが電動車椅子で側溝に転落し危険な状態となったが、オルカが呼んだ人の救助により一命をとりとめた。初めオルカに遭遇した人は、迷い犬と勘違いして連れ去ろうとしたが、オルカは首輪を壊して逃げ、必死でオーナーの元に人を導いた。 200305 2003年5月 [2]
200604 2006年4月 ブルー ジャーマン・シェパード・ドッグの警察犬。凶悪犯を追跡し、自らが刺されたにもかかわらずその男の隠れ家まで辿り着き、援軍到着まで見張りを続け武装解除と逮捕に貢献した。 200503 2005年3月 [2]
200604 2006年4月 ゾルタン ジャーマン・シェパード・ドッグの警察犬。刃物で市民や警察を威嚇していた犯人捕獲の際差されて負傷した。20cmもの刺し傷を負う重症だったが、手術を受け2ヶ月後には復帰した。 200504 2005年4月 [2][13][14]
200606 2006年6月 ディラン
クラッカー
北アイルランド災害救助犬兄弟。1999年トルコで発生したイズミット地震での活躍を含む、彼らの「並外れた勇気」に溢れた数々の救助活動に対して賞が贈られた。 199900 1999年 [6][15]
200607 2006年7月* バムセ(英語版) 第二次世界大戦のさ中、ノルウェー海軍掃海艇ソロッド(英語版)にマスコットとして乗船したセント・バーナード。活躍はマスコットに止まらず、乗員を溺死から救ったり、港ではナイフを持って乗員を襲った男を海に叩き落した。 194100 1941 - 1942年 [16]
200707 2007年7月 ヴィニー
ビリー
ジェイク
ヴィニー、ビリー、そしてジェイクはいずれも探知犬で、2005年7月のロンドン同時爆破事件において、爆弾探知に貢献し多くの命を救った14頭の犬たちの代表として表彰された。 200507 2005年7月 [17]
200712 2007年12月 ギリー イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのギリーは、散歩中倒れたオーナーの母親を救うため走り吠え続けた。彼のおかげで駆け付けた人々により老婦人は救助され後に無事全快した。 200712 2007年12月 [18]
200902 2009年2月* ジョージ(英語版) ニュージーランドのジャック・ラッセル・テリア、ジョージは、自らの命を犠牲にして2頭のピットブルに襲われた5人の子供たちを救った。ジョージには、ニュージーランドの動物保護協会からもメダルが、またこのエピソードに感動したアメリカのあるベトナム帰還兵から、自身の持つパープルハート章が贈られた。 200704 2007年4月 [7][19]
200907 2009年7月 ボスニッチ ラブラドール・レトリバーのボスニッチは、湖水地方を一緒に散歩中遭難し動けなくなったオーナーの父親の元へ、地元のハイカーたちを引き連れて戻った。そしてレスキュー隊到着までずっと寄り添った。 200608 2006年8月 [3][20]
201007 2010年7月 アニヤ ジャーマン・シェパード・ドッグの警察犬。ナイフを持って襲い掛かる犯人に抵抗し、自らとハンドラー(英語版)が重傷を負いながらも鎮圧に貢献した。彼女のおかげでハンドラーは致命傷を免れ、他の隊員の犠牲も最小限で抑えられた。 200801 2008年1月 [21][22]
201007 2010年7月 フロド 5歳のビーグル、フロドは、就寝中に自宅で起きた火災にいち早く反応し、警告と避難の手助けをした。彼のおかげでオーナー、その両親、そして遊びに来ていたフィアンセ、全員が助かった。 200806 2008年6月 [21][22]
201007 2010年7月* オイ スタッフォードシャー・ブル・テリア、オイの自宅に、深夜マチェテを携えた3人組の強盗が侵入した。2人はすぐに逃げ出したが、残る1人が家族を襲おうとしたためオイが応戦、撃退した。オイの深い傷は懸命の治療により癒えたが、残念ながらその2年後、表彰の前にオイは癌でこの世を去った。 200807 2008年7月 [21][23]
201104 2011年4月 デクスター グロスターの警察犬。激しい暴動のさ中、重傷を負いながらも職務を全うした勇気と功績が表彰された。 [4]
201210 2012年10月 エリー
ジョーンズ
ジャーマン・シェパード・ドッグのエリーとジョーンズは、糖尿病のオーナーが突然低血糖症で倒れたとき、エリーはオーナーに付き添い、ジョーンズが家族を呼びに行ってオーナーの命を救った。 201011 2010年11月 [24]
201306 2013年6月 エイジャックス ジャーマン・シェパード・ドッグの爆弾探知犬。極めて危険な状況下で人命救助に尽くした勇気が称えられた。エイジャックスは2009年、マヨルカ島ETAの爆弾を発見し、多くの命を救った。 200907 2009年7月 [9]
201308 2013年8月* ゲイジ ジャーマン・シェパード・ドッグの警察犬。麻薬捜査中犯人の銃撃に遭い、負傷したハンドラーに対する2度目の銃撃を身代わりに受けて死亡した。ハンドラー以外の警官たちもゲイジの抵抗に助けられたと感じていた。 201007 2010年7月 [8]
201601 2016年1月 K9キラー(英語版) 南アフリカクルーガー国立公園の特別作戦チームと協力して、サイの密猟を防ぐベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノア。2015年7月現在、作戦に参加した犬の中で最も最も多い77人の逮捕に貢献した。 201201 2012年 - [1]
201702 February 2017 オジー フォルカークの元警察犬。9歳で警察犬を退役したオジーは、アパート爆破を予告して暴れる強盗がいる現場に、ハンドラーと共に呼ばれた。オジーはハンドラーの指示で犯人にタックルし、武装解除させて住民も建物も無傷での解決に貢献した。 201501 2015年 [25]
201706 2017年6月 ディーゼル スタッフォードシャー・ブル・テリアのディーゼルは、早朝自宅で起きた火災をいち早く家族に知らせ、全員の無事脱出に貢献した。ディーゼルは生後数ヶ月で捨てられていたところを、この家族に迎えられた保護犬(英語版)だった。 201605 2016年5月28日 [26]
201804 2018年4月 テディ コッカープーのテディは、オーナーの息子が衣類乾燥機に入ったまま始動したのに気づき、上階にいるオーナーの元に走り警告を発した。 助け出された子供は打撲や火傷を負ってはいたが、テディのおかげで重大な危機を免れた。 201611 2016年11月13日 [27][28]
201805 2018年5月 フィン(英語版) ジャーマン・シェパード・ドッグの警察犬。ハートフォードシャーで任務中に犯人のナイフで重傷を負った。その後フィンとハンドラーは、職務中に負傷した動物の保護を強化する法律の整備に向けてキャンペーンを行った。 201610 2016年10月 [29]
202009 2020年9月 マガワ サバンナアフリカオニネズミ(英語版)のマガワは、鋭い嗅覚を生かして内戦の後遺症に苦しむカンボジア地雷不発弾の撤去に尽力した。マガワはAPOPOによる9ヶ月の訓練を受けた後2013年から従事し、2021年6月引退するまでに地雷71個と不発弾38個を発見した。引退後は好物のバナナピーナッツを食べながら、のんびり余生を過ごす予定である。 201301 2013 - 2021年 [10][30]
[31][32]

関連項目

  • ディッキンメダル - PDSAの創設者マリア・ディッキン(英語版)により1943年に制定された。PDSAゴールドメダルとは別に、軍隊に従事する動物たちを称えるために運営されている。[33][34]
  • スウォンジー・ジャック(英語版) - PDSAゴールドメダル制定前に、国際犬保護同盟(英語版)から2度表彰を受けた犬。
  • 特別な犬の一覧(英語版)

出典

  1. ^ a b Grant, Katie (2016年1月8日). “K9 Killer: Dog receives PDSA Gold Medal for helping to save rhino from extinction”. The Independent. 2019年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月19日閲覧。
  2. ^ a b c d “Life-saving dog gets medal honour”. BBCニュース (2006年4月5日). 2007年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  3. ^ a b “Rescue Labrador in medal honour”. BBC News (2009年7月28日). 2010年10月7日閲覧。
  4. ^ a b “PDSA Gold Medal”. 病気の動物のための人民診療所(英語版). 2010年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  5. ^ a b “Owner saved by wonder-dog”. BBCニュース (2002年11月13日). 2009年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月10日閲覧。
  6. ^ a b “Gold Medal dogs”. 病気の動物のための人民診療所(英語版). 2010年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  7. ^ a b “Brave Dog Died To Save Children”. Sky News (2009年2月11日). 2009年2月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  8. ^ a b “Police dog Gage posthumously awarded PDSA Gold Medal for life saving act”. NZ Police Media (2013年8月22日). 2013年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月22日閲覧。
  9. ^ a b “Life-saving Spanish police dog receives top animal honour from PDSA”. 病気の動物のための人民診療所(英語版) (2013年6月11日). 2013年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月7日閲覧。
  10. ^ a b “HeroRAT Magawa - PDSA Gold Medal”. PDSA. 2020年9月25日閲覧。
  11. ^ a b “Annual Review 2002” (pdf). 病気の動物のための人民診療所(英語版). p. 14. 2011年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  12. ^ “Delta Monty', a four-year-old German Shepherd police dog who was left Stock Photo - Alamy”. alamy.com. 2021年6月8日閲覧。
  13. ^ “Stabbed Zoltan is back on the beat”. gazettelive.co.uk (2005年6月18日). 2021年6月8日閲覧。
  14. ^ “Hero Dogs”. safeandhound.co.uk. 2021年6月9日閲覧。
  15. ^ “Annual Review 2006” (pdf). 病気の動物のための人民診療所(英語版). p. 14. 2011年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  16. ^ “Courageous WWII sea dog honoured”. BBC News (2006年7月21日). 2010年10月7日閲覧。
  17. ^ “Gold medals for 7/7 sniffer dogs”. BBC News (2007年7月3日). 2009年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  18. ^ “Puppy's bark 'saved woman's life'”. BBC News (2007年12月3日). 2010年10月7日閲覧。
  19. ^ “Purple Heart for brave George”. smh.com.au (2007年5月9日). 2021年6月8日閲覧。
  20. ^ “Annual Review 2009” (pdf). 病気の動物のための人民診療所(英語版). p. 13. 2011年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  21. ^ a b c Sinclair, Lulu (2010年7月6日). “Courageous Companions Win Bravery Awards”. Sky News. 2010年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  22. ^ a b “Dogs awarded 'George Cross'”. Daily Telegraph. Telegraph Media Group (2010年7月6日). 2010年7月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  23. ^ “Courageous canines honoured with animals' George Cross”. 病気の動物のための人民診療所(英語版) (2010年6月11日). 2010年8月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  24. ^ “PDSA Gold Medal dogs”. 病気の動物のための人民診療所(英語版). 2013年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月7日閲覧。
  25. ^ “Bravery award for dog who prevented block of flats blast”. BBC News (2017年2月24日). 2017年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月19日閲覧。
  26. ^ “Top honour for dog who saved owners from a house fire”. Devon and Somerset Fire and Rescue Service (2017年6月15日). 2019年4月19日閲覧。
  27. ^ “Teddy receives PDSA Gold Medal”. PDSA. 2018年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月19日閲覧。
  28. ^ “Dog helps save boy trapped in tumble dryer”. theguardian.com (2016年11月14日). 2021年6月8日閲覧。
  29. ^ “Hero dog Finn to receive the PDSA Gold Medal”. PDSA. 2018年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年11月18日閲覧。
  30. ^ “Magawa the mine-detecting rat wins PDSA Gold Medal”. BBC News. 2020年9月25日閲覧。
  31. ^ “火薬をかぎ分けるネズミ、地雷除去に活躍”. natgeo.nikkeibp.co.jp (2015年10月9日). 2021年6月8日閲覧。
  32. ^ “カンボジアの地雷除去で大活躍、ネズミの「マガワ」が引退”. afpbb.com (2021年6月6日). 2021年6月8日閲覧。
  33. ^ “PDSA Dickin Medal”. 病気の動物のための人民診療所(英語版). 2014年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  34. ^ “The Animals' VC”. BBCラジオ4(英語版). 2008年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。

外部リンク

  • People's Dispensary for Sick Animals website (英語)
  • The PDSA Animal Awards Programme (英語)